トップリーダーズインタビュー
弁護士法人わかさ 代表社員 弁護士 若狭勝



今回のトップリーダーズインタビューは、元東京地検特捜部副部長で弁護士法人わかさ代表社員、そしてもちろん、テレビ番組のコメンテーターでおなじみの若狭勝弁護士です。
若狭先生は元検事なので、世間では「刑事事件が強い」というイメージを持たれているかもしれませんが、実は民事事件にも精通しています。

そして、意外に感じるかもしれませんが、不倫事情について一家言お持ちです。
若狭先生は、長年の観察から「不倫に陥る5つのパターン」を発見しました。その深い洞察力には、ただただ感心するばかりです。

インタビューではそのほかにも、新型コロナウイルス感染拡大(以下、コロナ禍)や東京オリンピック・パラリンピック、アメリカの新政権についての見解も尋ねました。



GoToはよい経済政策だが、中止の判断は遅かった

政府のコロナ禍の経済対策であるGoToキャンペーンについて、どのように評価していますか。

「私もGoToキャンペーンを利用しました。この事業は、人々に『観光に行こう』と思わせる力があり、経済対策としては優れていると思います。
しかし、経済対策と感染防止のバランスをしっかり考えなければなりません。政府がGoTo中止を決める判断は遅かったと思います。

政府は、中止の決断が遅れた理由について、GoToによって感染者が増えたというエビデンスがなかったからだ、と説明していますが、これは馬鹿げた話です。
エビデンスなんてすぐに出せるわけがありません。
それよりも重要なことは、大衆心理を理解することでした。GoToを続けている限り、国民は『差し迫った状況ではない』と考えてしまいます。
私も衆義院議員をしていたのでわかるのですが、政治家の多くは、政治家の家庭で生まれ育っていて、一般の人の心理が理解できないのです。
『政治がこういう判断をすれば国民はこう考える』ということが予測できないのです」

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東京五輪はしたたかさが必要

話が変わって、東京オリンピック・パラリンピックについてですが、どのような形になると思いますか。そもそも、開催すると思いますか。

「仮に開催するとなっても、これまでのオリンピック・パラリンピックとは異なる形態になるでしょう。無観客で行うか、観客を入れるにしても人数制限をしたり、PCR検査で陰性になった人だけを入れたりするようになるでしょう」

もし、東京オリンピック・パラリンピックが中止になったら、日本にどのような影響が出るでしょうか。

「日本国民の心理に与える影響はかなり大きいでしょうね。国全体が落ち込み株価も下落するでしょう。
ただ、早く決断できれば、損失を減らすことができます。最悪なのは、ギリギリになって、やっぱりできません、と決めることです。
なぜ、早い決断が必要になるのかというと、オリンピック・パラリンピックを中止にしても、そのお金をコロナ対策に回すことができれば、国民の支持が得られるからです。
転んでもただでは起きない、というしたたかさが政治に求められています」

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日米関係は大きく変わらないが予測可能になった

トランプ政権が2021年に終わり、バイデン政権が始まりました。アメリカのこの大きな動きは、日本にどのような影響を与えるでしょうか。

「基本的には大きく変わらないでしょう。なぜなら、日米安保条約が変わらないからです。トランプ政権下でもバイデン政権下でも、日本がアメリカの核によって守られている状況は不変です。
本来はこの状態がよいのか悪いのかを議論する必要がありますが、多くの国民は、この大きな問題を意識することなく毎日暮らしています。
これがマクロの話になります。
一方、ミクロの話はまた違ってきます。
バイデン政権になって、アメリカ政治の今後が予測しやすくなりました。
トランプ政権は予測不能で、ツイッターで株価が乱高下したり、突然、パリ協定を脱退するとかWHO脱退するとかという話になっていました。
それに比べると、バイデン政権の動きを予測することは可能です。日本の政治としては、バイデン大統領のほうがやりやすいでしょうね。
ただ、やりやすいといっても、アメリカが日本に無理難題を突きつけないとは限りません。その点は注視していく必要があります。

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コロナ禍と不倫の意外な関係

若狭先生が、不倫問題に強い関心をお持ちであることを知らない人は多いと思います。

「私は検事でしたので『事件』として不倫問題に着目しています。
犯罪には、大きく次の3つの要素が関係しています。

1、酒がからむトラブル
2、男女関係のもつれ
3、金銭トラブル

暴力事件や殺人事件の多くは、この3つのいずれか、またはすべてが関係します。
コロナ禍によって、飲食店でお酒を飲む機会が激減したので、酒にまつわる犯罪は減少傾向にあると思います。
ただ、コロナ禍でも関係ないのが、男女関係です。
ここに不倫問題が含まれます。
ふられたとか捨てられたとか、男女関係からは、いろいろな犯罪が生まれます」

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不倫に陥る5パターンとは

若狭先生は、不倫に陥るには5つのパターンがあるとおっしゃっています。詳しく教えてください。

「不倫をする心理に一定の法則があることに気がついたのは、検事時代でした。男女関係のもつれで生じた殺人事件を扱っているなかで、自分なりに人々の心理を整理してみて、不倫には5つのパターンがあることがみえたのです。

1つ目は、つまみ食いです。フランス料理を食べている途中なのに、横からおいしいデザートを出されると、つい手を伸ばしてしまう。夫婦関係が良好なのに不倫が起きるのは、つまみ食いパターンです。

2つ目は、すきま風です。男女の仲がギクシャクし始めると、心にすきま風が吹きます。そうなると、ほかの人への想いが募りやすくなり不倫に走りやすくなります。

3つ目は、日常からの脱出で、これは2つの形態があります。
日常からの脱出その1は、刺激がない毎日からの脱出で、刺激を求めて不倫に陥ります。
日常からの脱出その2は、つらい毎日からの脱出です。例えば、大震災のあとに居ても立っても居られない不安が生じて、毎日が暗闇に包まれ、現実逃避の誘惑にかられて不倫をしてしまいます」

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コロナ禍で不倫は増えて減る

4つ目と5つ目をお聞きする前に、「日常からの脱出」パターンについて、お聞きしたいことがあります。
実は、MR探偵社でも、震災などの大災害のあとに不倫調査の依頼が増える傾向にあります。今まで「なぜだろう」と思っていたのですが、若狭先生の「日常からの脱出」パターンに該当すると思いました。
コロナ禍では不倫は増えていくのでしょうか。

「私は、コロナ禍によって、不倫が増える現象と、減る現象が同時に起きるのではないかとみています。
不倫が増えると考えるのは、生活が制限されるなかで現実逃避をしたくなって、不倫相手に会いたくなるからです。2人とも陰性なら、ホテルの部屋にいても密にはなりません。
不倫が減ると考えるのは、コロナ禍によって家庭環境が改善する可能性があるからです。不倫のチャンスが減りますし、夫婦での会話も増えます。そうなると、すきま風が止んで、不倫の動機がなくなるというわけです」

ということは、プラスマイナス・ゼロということでしょうか。

「そうですね」

MR探偵社の不倫調査も、コロナ禍の影響を受けています。コロナ前は、不倫中の2人は、デートして食事をしてからラブホテルへ、というケースがほとんどでしたが、コロナ禍では、飲食を省いてすぐにラブホテルに直行するケースが増えているのです。調査はやりやすくなったのですが(笑)。
また、コロナ前に比べるとお泊り不倫が減りました。

「私のところにも不倫相談はきますが、コロナ禍によって状況は変わりましたね。コロナ前に、結構深刻な不倫相談があったのですが、コロナ禍が深刻化してから落ち着きました。コロナ禍がなかったら泥沼にはまっていたと思います」

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根っからの好き者はコロナ収束後に再開?

コロナ禍によって不倫を中断した人は、コロナ禍が収束したらそのまま平穏に暮らすのでしょうか、それともまた不倫を始めるのでしょうか。

「それでは、不倫心理の5パターンの続きを解説しますね。それと深いかかわりがあります。

4つ目のパターンは、ノスタルジアです。昔を思う気持ちで、不倫をするパターンです。
50代60代になると、『恋をするなら今が最後のチャンス』という想いが募ることがあります。若いころに味わった刺激が欲しくなって、不倫をします。

そして5つ目のパターンが、根っからの好き者、つまり好色です。
根っからの好き者は、コロナ禍で不倫マインドが沈静化しても、コロナ禍が収束したら、またムクムクと不倫欲求が強まってくるでしょう」

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配偶者の不倫を疑ったら探偵社に依頼するのがよい

配偶者やパートナーが不倫しているかもしれないと思ったとき、私たちのような探偵に調査を依頼することは、よいことでしょうか。
配偶者の不倫に悩んでいる人のために、アドバイスをお願いします。

「私が、配偶者の不倫を疑っている人から相談を受けたら、『探偵さんに調べてもらったほうがよいでしょう』とアドバイスしていますよ。
なぜなら、将来、裁判に訴えるとき証拠がすべてだからです。単に、自分のメモ帳に『あやしい』と書いているだけでは、離婚が認められる可能性は弱いです。
ホテルに入っていく写真があれば、それが決定打になります。証拠は、不倫がらみの離婚問題になくてはならない必要不可欠なものです。
ホテルの写真だけでなく、会話の録音や、暴力をふられたときのケガの写真も証拠になります。しかし一般の人では、確かな証拠を持つことは難しいので、専門の探偵にお願いするのは大事なプロセスです」

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ドロドロした関係のなかから「やり直し」の芽が出てくることもある

若狭先生、次の2点の理解は間違っていないでしょうか。

●不倫の証拠は3年間有効
●配偶者が不倫をしたら、不倫された側は、離婚の申し出を拒否することもできるし、離婚を求めることもできる

「はい、正しいですよ。慰謝料を請求できるのは、不法行為(不倫)を知ってから3年以内ですし、離婚の拒否も離婚の求めも、その理解で間違いありません」

この質問をさせていただいたのは、興味深い現象があるからです。
MR探偵社の不倫調査では、証拠を取るだけでなく、お客さんのカウンセリングも行なっています。不倫の証拠をつかんで、お客さんにそれを提示してカウンセリングをすると、7、8割はやり直しを望むんですね。
不倫を問いただしたくて探偵社に依頼するのですが、いざ証拠が明白になると、やり直せないかと考えるようになるのです。
これはどのような心理が働いていると思いますか。

「調停を経て裁判に進んでしまうと、普通は修羅場になります。お互い、あることないこと言い合って、お互いに傷つくことになります。
ただその一方で、人間関係が本格的にドロドロし始めると、怒りや不安が強まる一方で、相手のことをこれまで以上に知ることができるようになることがあります。裁判までもつれた結果、相手がどう思っていたかがわかることがあるんです。
真剣に離婚を考えていても、お互いに少しでも『もう一度やり直せないか』と思えると、修復できることがあります。
そういった意味では、MR探偵社さんで、カウンセリングをしているのは、よい取り組みだと思います」

ありがとうございます。

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離婚調停とは、離婚裁判とは

離婚調停について教えてください。調停は何回くらい開かれるのでしょうか。

「ケースバイケースですが、調停を2、3回やって、まとまらなければ裁判へ、ということもあります。
調停のなかには、離婚を前提としないものもあります。これを夫婦関係調整調停といいます。
夫婦関係がぎくしゃくしているときに、家庭裁判所の調停を受けることで、修復できることがあります。調停で自分の想いを相手にぶつけることができます。
また、調停をする調停委員が、2人の言い分を聞いて『子供のためにも、関係を修復してはどうでしょうか』とアドバイスすることもあります」

なるほど。これ以上双方の話を聞いても進展が難しい場合に、調停委員が「次は裁判ですね」と判断するわけですね。

「そうです。裁判になると、訴えたほうも、訴えられたほうも、遠慮なく主張しますから、長引きますね。1年を超えることは珍しくありません」

1年を超えますか。
本人が裁判所に行かず、弁護士に任せることもできるのでしょうか。

「はい、できます。裁判では、裁判官は最終的には双方に直接訊問するので、1回も裁判所に行かないわけにはいきませんが、その間の書面のやり取りは、弁護士に任せることができます」

調停はいかがでしょうか。

「調停も、弁護士が対応できます。ただ、調停委員は比較的、本人から直接話を聞こうとしますね」

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不倫は社会と切り離せないのではないか

価値観の多様化が進んでいるといわれていますが、不倫の形態も今後、多様化するのでしょうか。

「人間が感情を持った動物である以上、不倫は必ず起きます。すべての人が不倫をするわけでは、もちろんありませんが、人間社会のなかでは不倫は当たり前の現象であると私はみています。
しかし日本の社会では、価値観の多様化が進んでいます。そうなると、妻は家庭に入って子育てをするという、がんじがらめの価値観が緩みます。したがって、昔よりははるかに不倫に陥る可能性は高くなるのではないでしょうか。

心にすきま風が吹くと不倫に走る、というのは人間の心理なのではないでしょうか。人間的かつ道徳的に駄目とは、私は決していえません。いたし方ない部分が、不倫のなかにあると思っています。
だからといって、不倫は文化であるとはいいませんが、しかし人間社会のなかでは切り離せない現象でしょう」

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人間関係の在り方を見直す時期に来ている

20代30代の若い人たちのなかには、SNSなどのバーチャルの世界で満足する人もいます。これからの人間関係はどうなると思いますか。これまでとおり、人と人との触れ合いは重要なのでしょうか、それともバーチャルで済んでしまうのでしょうか。

「バーチャルの世界では、感情を発信したり、感情を受け止めたり、といったことが減ります。そういった意味では、バーチャルが広がると、日本の社会において培われてきた人間関係が希薄になるのは間違ないでしょう。
バーチャルがすべてよしとは到底なりません。ただ、バーチャルが悪いわけではなく、重要なのはバランスです。人間というのは実際に触れあうことで、コミュニケーションを取ることができます。
今はコロナ禍の最中なので密を避けなければなりませんが、人間関係の本来の姿は、密のなかで触れ合うことだと思います。それが健全な人間社会をつくります」

確かにバランスが大事ですね。
不倫に関する若狭先生の見解は、とても奥深いと感じました。貴重なお話をありがとうございました。

「こちらこそ、ありがとうございます」

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